「緑内障です」 「これから一生付き合っていく病気です」
診察室でこのように言われると、
「いつか見えなくなるのだろうか」 「一生、点眼を続けなければならないのだろうか」 「今までと同じ生活を続けられるのだろうか」
と不安になるのは自然なことです。
緑内障は自覚症状が乏しいことが多いため、特に困っていなかった方が、検査をきっかけに突然「慢性の病気があります」と説明されることも珍しくありません。
この記事では、「一生付き合う病気」という言葉をどのように受け止めればよいのか、不安とどのように向き合えばよいのかを、患者さんの立場から考えてみます。
緑内障と診断されて不安になるのは珍しいことではありません
緑内障と聞くと、「失明」という言葉を思い浮かべる方も少なくありません。
実際に、緑内障と診断されたばかりの患者さんを対象とした研究では、失明への不安を感じている方が一定数いることが報告されています。また、緑内障について患者さんに分かりやすく説明し、相談できる機会を設けることで、不安が軽減する可能性も示されています。
不安を感じることは、病気を正しく理解できていない証拠でも、気持ちが弱いからでもありません。
まずは「不安になるのは自然な反応である」と考えてよいと思います。
「一生付き合う病気」は「一生悪くなり続ける病気」という意味ではありません
緑内障は、基本的には長期間にわたって検査や治療を続ける病気です。
一度傷んだ視神経や失われた視野は元に戻すことが難しいため、定期的に検査を行い、必要に応じて治療を調整しながら、現在の見え方をできるだけ長く保つことを目指します。
しかし、「一生付き合う」という言葉は、
- 「これから必ず視野が悪くなり続ける」
- 「いずれ必ず失明する」
- 「毎日、病気のことを考え続けなければならない」
という意味ではありません。
緑内障の進行速度には大きな個人差があり、早期に発見して適切な治療と経過観察を行うことで、進行を抑えながら長く視機能を保てる場合があります。緑内障治療の原則は眼圧を下げることであり、点眼、レーザー、手術などから病型や病期に応じて治療が選択されます。
「一生付き合う」とは、病気を生活の中心に置くことではなく、定期的な通院や必要な治療を生活の一部として続けていくこと、と考える方が実際に近いでしょう。
「一生、同じ治療を続ける」という意味でもありません
緑内障の治療内容は、ずっと同じとは限りません。
眼圧、視野検査、OCTなどの結果を確認しながら、
- 今の点眼を続ける
- 点眼薬の種類を変更する
- 点眼薬を追加または減らす
- レーザー治療を検討する
- 必要に応じて手術を検討する
など、その時点の状態に合わせて治療方針が調整されます。
そのため、「一生付き合う病気」と言われても、「今日から一生、全く同じ点眼を続ける」と決まったわけではありません。
点眼の変更・中止は自己判断で行わないでください
点眼の変更や中止は自己判断で行わず、必ず主治医と相談してください。
診断された日の検査だけで、将来のすべてが決まるわけではありません
緑内障の将来を考えるためには、
- 現在の視野障害の程度
- これまでの進行速度
- 眼圧の高さと変動
- 治療によって眼圧がどの程度下がるか
- 年齢
- 緑内障のタイプ
- 他の眼疾患や全身疾患
など、さまざまな情報が必要です。
特に進行速度は、過去の視野検査やOCT検査を比較して初めて分かることがあります。
診断された直後には十分な過去データがなく、主治医にもまだ判断できないことがあります。その場合は、数回の検査を重ねながら、その患者さんに合った目標眼圧や通院間隔を考えていきます。
診断されたその日に「自分の将来がすべて決まった」と考える必要はありません。
漠然とした不安を、具体的な質問に変えてみましょう
不安が大きいときには、「大丈夫ですか」と質問しても、何を知りたいのか自分でも整理できていないことがあります。
そのような場合は、次のように質問を分けてみると、主治医の説明を理解しやすくなります。
- 現在の緑内障は、どの程度の段階ですか
- 今のところ、進行していると考えられますか
- 私の目標眼圧はどの程度ですか
- 次回の診察までに、私が行うべきことは何ですか
- 今後、どのような検査で経過を確認しますか
その場ですべての答えが出るとは限りません。
「進行しているかどうかは、今後の検査を見ないと分からない」という回答も、説明不足ではなく、緑内障という病気の性質によるものです。
聞きたいことをスマートフォンや紙にメモしておき、診察時に一つずつ確認する方法もあります。
今できることに目を向ける
将来の視野を完全に予測することは困難ですが、患者さん自身が取り組めることはあります。
- 処方された点眼を指示どおりに続ける
- 決められた時期に通院する
- 視野検査やOCT検査を定期的に受ける
- 点眼を忘れたことや副作用を主治医に伝える
- 治療や検査で分からないことを質問する
すべてを完璧に行う必要はありません。
点眼を忘れたことがあっても、隠す必要はありません。実際の使用状況が分からなければ、主治医が眼圧や検査結果を正しく評価しにくくなるため、率直に伝えることが大切です。
インターネットの情報で不安が強くなることもあります
緑内障について検索すると、重症の患者さんの体験談や、失明に関する情報が目に入ることがあります。
しかし、同じ「緑内障」という病名でも、
- 診断された時点の進行度
- 緑内障のタイプ
- 進行速度
- 治療への反応
- 年齢
は患者さんごとに異なります。
インターネットで見つけた他の患者さんの経過が、そのままご自身の将来を示しているわけではありません。
情報を調べるほど不安が強くなる場合は、いったん検索を休み、「自分の場合はどうなのか」を主治医に確認することをおすすめします。
不安が日常生活に影響している場合
緑内障患者さんでは、不安や抑うつ症状がみられることがあり、特に診断直後や見え方への心配が強い時期には心理的な負担が生じる可能性があります。
不安によって、
- 眠れない日が続く
- 仕事や家事に集中できない
- 病気のことが一日中頭から離れない
- 怖くて通院や検査を避けてしまう
といった状態が続く場合は、眼科主治医に伝えてください。
必要に応じて、かかりつけ医や心療内科・精神科などに相談することも選択肢です。不安について相談することは、緑内障治療から外れた話ではありません。
まとめ:「一生」ではなく、まず次の診察までを考える
「一生付き合う病気」と言われると、何十年先まで一度に考えてしまい、不安が大きくなることがあります。
しかし、今すぐ一生分のことを理解し、決める必要はありません。
まずは、
- 次の診察まで点眼を続ける
- 次の検査を受ける
- 分からないことを一つ質問する
という身近なことからで十分です。
「一生付き合う」とは、毎日不安を抱え続けるという意味ではありません。
定期的に状態を確認し、必要なときに治療を調整しながら、緑内障だけにとらわれず日々の生活を続けていくことです。
不安を完全になくすことを目指すのではなく、分からないことを少しずつ具体的な情報に変えていくことが、緑内障と付き合っていく第一歩になると思います。
緑内障の基本は緑内障とは?症状・原因・治療の基本でも解説しています。
医療免責事項
本サイトは、緑内障についての一般的な情報を分かりやすくお伝えすることを目的としたものです。
記載されている内容は、個々の患者さんの診断や治療方針を示すものではありません。 実際の診療においては、年齢、病型、進行速度、併存疾患などを踏まえ、主治医が総合的に判断します。
本サイトの内容をもとに治療の変更や自己判断を行わず、必ず主治医と相談のうえでご対応ください。
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