「緑内障と白内障は、色が違うだけで似た病気ですか」 「白内障の手術をすれば、緑内障も良くなりますか」
外来では、このような質問を受けることがあります。
どちらも病名に色が入り、年齢とともに増える病気なので混同されやすいですが、緑内障と白内障は、障害される場所も症状も治療目的も異なる病気です。
白内障は「水晶体」が濁る病気
水晶体は、眼の中でカメラのレンズのような役割をしている透明な組織です。
白内障では、この水晶体が濁ることで光が眼の奥まできれいに届きにくくなります。
主な症状は、
- 全体がかすんで見える
- 視力が下がる
- 光をまぶしく感じる
- 夜間や逆光で見えにくい
- 色が以前より鮮やかに見えない
などです。
白内障手術では、濁った水晶体を取り除き、代わりに透明な眼内レンズを挿入します。見えにくさの主な原因が白内障であれば、手術によって視力や見え方の改善が期待できます。
白内障は必ずしも「白く」見えるとは限らない
白内障は、水晶体が白く濁る病気というイメージを持ちやすい病名です。
実際には、水晶体の濁り方や進行の程度によって、白色だけでなく黄色や褐色に見えることがあります。非常に進行した核白内障では、濃い褐色から黒色に近く見える例もあります。
したがって、「白く見えないから白内障ではない」というわけではありません。
緑内障は「視神経」が傷む病気
緑内障は、眼から脳へ視覚情報を伝える視神経が傷み、それに対応する視野が欠けていく病気です。
白内障のように、眼の中の透明な組織が濁る病気ではありません。
多くの緑内障では、中心の視力が比較的長く保たれたまま、視野の一部が少しずつ障害されます。そのため、初期から中期には自覚症状が乏しいことがあります。
現在、緑内障治療の原則は眼圧を下げることであり、点眼、レーザー、手術などを用いて、これ以上視神経障害が進まないようにすることを目指します。
なぜ「緑」内障という名前なのか
「白内障は水晶体が濁る病気だと分かるけれど、緑内障の“緑”は何を意味するのだろう」と疑問に感じる方もいると思います。
緑内障という名前は、古代ギリシャ語の「glaukos」に由来するとされます。この言葉は、青緑色、灰青色、淡い色などを表していました。
急激な眼圧上昇によって角膜が濁った眼や、瞳の奥が青緑色に見えた状態と結びつけて説明されることがあります。
ただし、古代に「glaucoma」と呼ばれていた病気が、現代の緑内障と完全に同じ病気だったかは明らかではなく、語源には歴史的な議論があります。
現在の緑内障患者さんの眼が緑色に見えるわけではありません。むしろ、色の意味はいったん忘れて、
- 白内障は水晶体が濁る病気
- 緑内障は視神経が傷み、視野が障害される病気
と理解する方が、病気の違いを把握しやすいと思います。
治療の目的が大きく異なる
| 白内障 | 緑内障 | |
|---|---|---|
| 障害される場所 | 水晶体(レンズ) | 視神経 |
| 主な症状 | かすみ、視力低下、まぶしさ | 視野が少しずつ欠ける(初期は自覚症状が乏しい) |
| 治療の目的 | 濁った水晶体を取り除き、現在の見え方を改善する | 眼圧を下げ、今後の視神経障害・視野障害の進行を抑える |
白内障手術は、白内障による見えにくさを改善することを目的とします。
一方、緑内障では、一度失われた視野を現在の治療で元に戻すことはできません。そのため、治療の中心は「良く見えるようにすること」ではなく、「これ以上悪くならないようにすること」です。現在残っている見え方を、できるだけ長く保つことを目指します。
緑内障と白内障が同時にあることも珍しくない
緑内障と白内障は、同じ患者さんに同時に生じることがあります。
白内障手術によってかすみや視力が改善しても、すでにある緑内障の視野障害が元に戻るわけではありません。また、白内障手術を受けた後も、緑内障の通院や点眼治療が必要になることがあります。
反対に、見えにくさの原因が緑内障や網膜の病気にもある場合は、白内障手術をしても期待したほど視力が改善しないことがあります。
閉塞隅角の場合は、白内障手術が緑内障の治療になることも
閉塞隅角の方では、白内障手術や水晶体摘出術が隅角を広げ、閉塞隅角の治療としての意味を持つ場合があります。どの治療をどの順番で行うかは、白内障の程度、緑内障の種類、眼圧、視野の状態などを踏まえて決められます。
まとめ:名前よりも、障害される場所で考える
白内障
- 水晶体が濁る病気
- かすみ、視力低下、まぶしさなどが起こる
- 手術によって見え方の改善を目指す
緑内障
- 視神経が傷む病気
- 視野が少しずつ障害される
- 眼圧を下げて進行を抑える
名前は似ていますが、病気の仕組みと治療目的は大きく異なります。
「最近見えにくくなったから白内障だろう」 「視力が良いから緑内障は進んでいないだろう」
と自己判断することはできません。
見え方に変化がある場合は、その原因が白内障なのか、緑内障なのか、あるいは別の病気なのかを眼科で確認することが大切です。
緑内障の基本は緑内障とは?症状・原因・治療の基本、自覚症状が出にくい理由は緑内障はなぜ気づきにくい?で解説しています。
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